2010年1月7日木曜日

ト-アロ-ド

お客様が激少
不況に喘ぐ飲食店の方と

人は何に動くか

そんな話をしながら
震災を思い出した

当時
三宮のト-アロ-ドに勤務していた
震災後
出勤するようになってからも
ビルには水道も出ず
用足しには
北野の小学校まで
仮設トイレを借りに行かねばならなかった

水が出ないので
飲食店も開かない

ト-アロ-ドに
おしゃれな紳士服店があった
素敵な門構えは
パリかロンドンのテ-ラ-みたい

当然長く閉店していたが
店の前で
オ-プンカフェのように
テ-ブルと椅子を用意し
紅茶とクッキ-を出されていた

若いハンサムなお兄さんが
2.3人
いつも立っておられる

 どうぞ
 どうぞ
 紅茶をどうぞ
 クッキ-もどうぞ

必ず通るので
帰りによく立ち寄った

食べ物に不自由し
水にも不自由し
寒い季節の
温かい飲み物は
神様からの贈り物のようだった

服屋さんである

店は暗いままなのに
わざわざポットを用意して
わざわざ若い子を用意して

このモデルのような
美しい若者たちが
ここの従業員で
手当をもらって立っているとしても
いつもにこやかで優しい
慈悲深い心が伝わる

この若者たちの心根も素晴らしいが
この経営者はなんて立派なお方だろう

敷居の高そうな店なので
歩行者は顧客でないはず

どこかで貴重な水を用意して
わざわざ閉店している店に
若者を送り出し
通りかかりの人々に
大きな声で呼びかけ
喜んでいただく

服屋である

喫茶店のように
温かい飲み物と
おいしいク-キ-を出す

お金は取られない
ご奉仕されている

 どうぞ
 どうぞ
 温かいものをどうぞ
 どうぞゆっくりお座りください

天使の声

1日や数日ではない
かなり長くその有難い
無料の
オ-プンカフェは続いた

遠慮がちに
クッキ-をいただきながら
感謝で胸がいっぱいになる

当時
子供たちは小学生

よし
この子たちが大きくなったら
必ずこのお店で
何か服を買わせていただこう
どんなに高くとも

かくしてそれは実現された
長男のために
初めて買ったス-ツは
ポ-ル・スミス

そのお店の名前は
『 Paul Smith 』

当時はそのブランドの名さへ知らなかった

何年たっても
忘れない

たまたま
男の子たちの母であった

まさか種蒔きなどの意識はもたれなかったであろう

物を売るようで
物を買うようで
人はただ心で動く
人は人に心動かされる

有難い貴重な経験をさせていただきました

いつも有難う御座います