2011年5月2日月曜日

太融寺観音堂

もっと元気であれば
完全看護に甘えて
伊勢か比叡山に
一日参りに出かけようか
と我が儘な企みもしていたが
母は日に日に
寝たきりへの道を
辿っている

病室に張り付いてもいたいが
やはり
祈り場を求めたい

運よく近くに
太融寺がある

ここもよく
参らせていただいた

朝早く
御数珠と観音経を持って
お散歩

観音堂に
上がらせていただく

ひんやり
外と違う空気が漂う

人間は誰もいない
ことをいいことに
厚かましくも
正面まで入り進む

この広い観音堂を
守る者のようなふりをして
ドッカと座り込むと
外の光りで
真っ暗に見えていた
奥から
金色の
千手観音様が
現れ申した

ここまで進んで
ようやく
輝く御姿を拝めるよう
粋な仕掛けが
なされてる

とろとろと
身体の力が
抜けていく

観音経を読む声を
しっかり
千手観音様に聴かれてる
ように感じ
ときどき顔を上げ
表情を伺う

母の顔を伺う
幼子のように

観音様の御顔に
母がだぶり
気付かされる
自分もまた
観音様に憧れて
進んでいることに

御蔭様で
戻ってなお拝む
ベッドの御顔

いつも有難う御座います